Tutti Lab

元シリコンバレー在住のおっさん技術者、モバイルVRアプリ開発に挑戦中

Vuforia for Unityを使って(擬似)ハンドトラッキング

前回、Viforia for Unityの機能を活用し、Google Cardboardでポジショントラッキングを実現する方法について記載しました。同様に、Vuforia for Unityを使うことで(擬似)ハンドトラッキングも可能です。
Vuforiaでは直接「手」を認識することはできません。しかし、手にマーカーを貼り付ける、マーカーを貼り付けたふだを持つなど、マーカ認識を通じて手の位置を認識する、ということは比較的容易に実現できます。
先日とあるVRイベント向けに開発した「Santa Claus Job Simulator」というサンタのお仕事を体験するアプリにて、この擬似ハンドトラッキングを実装してみましたので、本実装技術についてご紹介したいと思います。
www.youtube.com

ARCameraの設定

Google CardboardにてVuforia for Unityを利用した(マーカ認識による)ハンドトラッキングをする際のポイントは「VRのヘッドトラッキングを考慮した上で、Vuforiaで認識した「手」を「手の位置」に表示すること」です。
Vuforia for Unityはデフォルトでは「はじめに発見した認識対象の座標を固定し、認識対象との位置関係に応じてCameraの位置を変える」という設定になっています。VuforiaがImage Targetに指定された認識対象を発見した際、Image Targetの座標・回転が変化するのではなく、ARCamera(Main Cameraを子として含む)の座標・回転を変化させることで、相対的にImage Targetが動いているように見せます。
VRでなければ、特段問題は生じませんが、VR(Player SettingsにてVirtual Reality SupportedがON)の場合、ヘッドトラッキングによりデバイスの回転によりMain Cameraを回転させます。このため、上記のデフォルト設定では、ヘッドトラッキングの回転設定とVuforiaの回転設定が競合してしまい、ちょっと都合が悪いです。

そこで、

  • ARCameraのVuforia BehaviorコンポーネントのWorld Center Modeをデフォルトの「FIRST TARGET」から「CAMERA」に変更します。これで、認識対象物が発見された際の固定される座標はMain Cameraとなり、代わりにImage Targetの座標が変わります。
  • また、もう一点、Image TargetはMain Cameraの子とします。これは上記の通り、認識対象の位置はMain Cameraが固定であることを前提としていますから、ヘッドトラッキングによるMain Cameraの回転変化に関わらず、Image TargetからはMain Cemeraが固定に見えるようにするためです。

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また、Image Targetと「手」の位置関係にも工夫が必要です。Santa Claus Job Simulatorでは、マーカ付きの看板を手に持ってもらい、そのマーカを認識することで手を表示するようにしています。
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このためImage Target認識時に表示される手の位置・回転は、看板に貼り付けられたマーカからの相対位置・回転を設定する必要があります。
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高速化が不可欠

Vuforiaをハンドトラッキングに活用する上でもう一つ重要な点は、可能な限り処理の高速化を図ることです。
VR表示しながら、同時にマーカ認識するという処理は、モバイル端末にとって非常にヘビーなものとなります。
このため、Edit->Project Settings->Qualityにて処理をFastestとして描画・表示負荷を下げる等、できるだけ処理を軽くし、Vuforiaの認識処理にリソースを回してあげる必要があります。
描画負荷が高い場合等、Vuforiaの認識処理のための余裕がない場合、認識の品質は明らかに低下し、すぐに認識対象を見失ってしまいます。こうなると心地よりハンドトラッキングとは程遠くなってしまいます。

最後に

今回は、Google Cardboard向けに(擬似)ハンドトラッキング処理を実装した当方が開発したゲームを例に、Vuforiaによる(擬似)ハンドトラッキングを実装する方法について説明をしました。
モバイル向けにはVuforiaを活用したハンドトラッキング・ポジショントラッキングをどんどん活用したい、と思っていますが、最新のモバイルVRヘッドセットであるDaydream ViewではVuforiaが使えません。Google Cardboardのようにスマホカメラの位置に穴を開けるわけにはいきませんので。。
何らか他の方法を検討する必要があるな、と考えております。